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短編の記事 (12)

皐月うしこ 2019/05/08 11:00

お菓子で小説シリーズ「チョコパイ」

お題「チョコパイ」

小さな小さな世界の話。人間の中で暮らしている小人の存在は有名で、誰もが耳にしたことのある現実だろう。もちろんどこにでもいるわけではない。自分たちが暮らしやすい環境を提供してくれる人間の家に、小さな住処を作り、彼らはそこで存在している。

「おにいちゃん。あれはなあに?」

後ろからついてきた妹に、それはとてもいいものだという風に、兄は笑顔で前方を指さした。

「人間が好んで食べるとても甘くておいしいものだよ」

ひとつでなんと30人前。持って帰ればたくさんの子供たちが笑顔になれる魅惑のおやつ。

「一袋だけ内緒でこっそりもらうんだ」

見つからないようにこっそりと、彼らは人間が留守の間に包みをひとつ運んでいく。そうして彼らの住処にチョコパイが運ばれる頃、人間たちは帰宅した。だけど彼らは気づかない。日常の中に確かにあったものが忽然となくなってしまっても、気のせいだったかしらと特に気づきはしないのだ。

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皐月うしこ 2019/05/06 11:00

お菓子で小説シリーズ「ポテトチップス」

三日も続けば定番化。
「お菓子で小説」シリーズ
(1話300文字ほど)

お題「ポテトチップス」

薄い電子版から色とりどりの光と共に無数の音楽や声が重なり合って、現実とは程遠い魔法の世界を提供している。俗にいう映画かもしれないが、彼女にとってこれは彼と穏やかに過ごせるほんのささやかな日常でもあった。

「ふつう、ポップコーンじゃないの?」

いくら家で観賞会をするからといって、コンビニで買い占めたお菓子の系統は納得がいかない。

「いいのいいの、こっちのが美味しいし。ポップコーン飽きるじゃん」

そう言いながらバサバサと適当に購入されたお菓子類たちは、現在進行形で彼の口に運ばれては消えていく。映画の内容とはたぶん関係ない。それに、うるさい。

「え、なに?」

集中できないついでに、袋から取り出した薄いお菓子を二枚逆に重ね合わせて彼の方を向いてみた。食べれるものなら食べてみろ。そう目で訴えながら、彼女はアヒルの真似でニヤリと笑う。

「じゃ、遠慮なく」

ニヤリと笑ったのは彼も同じ。映画の中の魔法使いが小さな悲鳴を上げた頃だった。

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皐月うしこ 2019/05/04 11:00

お菓子で小説シリーズ「ルマンド」

こんにちは、皐月うしこです。
Twitterや他の活動で作成した作品をこちらでストック。

「お菓子で小説」シリーズ
(1話300文字ほど)

お題「ルマンド」

サクサク、サクサク。一定の可愛らしい音が聞こえてきたと思った瞬間、思わず彼女の顔を見て笑ってしまったのは、本当に申し訳ないと思っている。

「口の周りにいっぱいついてるよ」

アリであれば、喜んでその唇に群がっていくだろうに、残念ながらここにアリは存在しない。仲良く並んで帰る下刻途中で立ち寄ったコンビニのイートイン。お菓子コーナーに売っていた定番の袋を手に持って、彼女は嬉しそうに笑顔だったから特に気にもしていなかった。

「ちょっと、もう笑いすぎー」

そういって、また二人して笑い合う。あと何日、こうして一緒の時間を過ごすことが出来るのか。今はまだ、未来のことを考えないでどうかこのまま。時間が止まればいいのに。

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皐月うしこ 2018/12/22 23:58

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皐月うしこ 2018/10/09 15:47

小説「駅舎の中では誰かの声が」

キミはもしかしたら
もう忘れてしまって
いるかもしれない

風が教えてくれたあの日
季節の匂いの中で話した
他愛ない日常のことを

無人の駅で二人きり
人里離れた森の話を

覚えていると嬉しいな
紅をさした唇が
懐かしいキミの名を呼ぶ

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